単一のフローに比べて、オーケストレーションが加えるもの
単一の直線的なフローは、決まった時刻どおりにステップ1、ステップ2、ステップ3と送っていきます。オーケストレーションは、その上に制御の層を加えます。一人ひとりにとって最適な次の一手を決め、そのステップのチャネルを選び、適切なタイミングまでメッセージを保留し、送りすぎになるものを送信除外します。ジャーニー(MAツールでいうシナリオ)を構成するノードの分類(エントリー、送信、待機、分岐、終了)については、カスタマージャーニーとはで解説しています。このガイドで扱うのは、それらのノードを複数の独立した会話ではなく、1つの連携した会話として動かす層です。
分岐とイベント待ち
ジャーニーを、ただ進むだけでなく反応するものにする仕組みが2つあります。分岐は、プランの種類、セグメントへの所属、直前の行動などの条件を読み取り、人をどちらかの経路に振り分けます。イベント待ちは、特定のシグナル(購入、ログイン、返信)が届くか、タイムアウトになるまでジャーニーを一時停止し、その後に先へ進めます。2日目に有料化したトライアルユーザーに、3日目の有料化を促すメッセージを送るべきではありません。イベントは自社のトラッキングから来るため、オーケストレーションの質はデータの質で決まります。分岐に使いたいイベントが計測されていないなら、まずファーストパーティデータとトラッキングで、その点を直してください。
A/B分岐:文面だけでなく経路をテストする
件名のテストは、1つのメッセージの2つのバージョンを比べます。ジャーニーの中のA/B分岐は、経路の2つのバージョンを比べます。タイミング(すぐ送るか、1日待つか)、チャネル(メールが先か、Webプッシュが先か)、構成(2ステップのナーチャリングか、5ステップか)で分けることができます。A/B分岐のノードで各人をランダムに割り当て、どちらの経路がより多くゴールに到達するかを測定します。テストの対象は文言ではなく、オーケストレーションの判断そのものです。
チャネル横断の送信除外と引き継ぎ
送信除外は見落とされがちな部分ですが、オーケストレーションとスパムを分けるのはここです。これがなければ、ライフサイクルメール、休眠顧客の掘り起こしのSMS、アプリ内のプロンプトが、同じ日に同じ人に一斉に届きかねません。それぞれが単独でつくられているからです。チャネル横断の送信除外と送信頻度の上限(フリークエンシーキャップ)は、すべてのチャネルにまたがって人単位で同時に適用されるため、チャネルごとの量だけでなく、全体の量が制御されます。Brazeはこのルールを端的に表現しています。顧客が体験するのはブランドであり、別々のチャネルではない、と。引き継ぎは、次のステップをどのチャネルが担うかという関連した判断です。繰り返すのではなく段階を上げます。最も安く、最も押しつけがましくない接点から始め、反応がない場合にだけ、より直接的な接点に移ります。アプリ内メッセージがWebプッシュやメールに勝るのはどんなときかは、Webプッシュとアプリ内メッセージで解説しています。
すべてのジャーニーをゴール指標に結びつける
ゴールのノードがないジャーニーは、ただのシーケンスです。ゴールとは、そのジャーニーが動かすために存在する指標です。アクティベーション、再アクティベーション、リピート購入などで、スタートアップのノーススターメトリックと対応しているべきです。ゴールには2つの役割があります。A/B分岐に経路を比べる基準を与えること、そしてゴールに到達した瞬間にその人をジャーニーから外すことです。これ自体が送信除外になります。オーケストレーションは仕組みであり、オムニチャネルは、それがすべての接点で1つとして機能したときに到達する成熟度です。マルチチャネルとオムニチャネルの違いで取り上げたとおり、機能のチェックボックスではなく、連携の成果です。Customer.ioやIterableといったホスト型のプラットフォームが、ビジュアルジャーニービルダーを製品の中心に据えているのも、まさにこのためです。構築するときは、範囲を絞って始めてください。ゴールを1つ決め、それに必要なイベントを計測し、直線的な理想の経路をつくります。そのうえで、稼働させる前に分岐、イベント待ち、全体の送信頻度の上限を加えます。送信はサーバーの深夜0時ではなく、その人が現地でアクティブな時間帯に行い、送信を控える時間帯を守ってください。SMSでは、それが礼儀ではなく法的な要件であることも少なくありません。オーケストレーションは、抑制によって真価を発揮します。最良のフローは、多くの場合、何も送らないと判断するフローです。